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男性不妊

男性不妊とはどんな状態?

男性不妊とはどんな状態?不妊症とは、健康な男女が避妊をせずに1年間性交しても自然に妊娠しない状態を指します。
不妊症には様々な原因がありますが、男性側に原因があるものを男性不妊と呼びます。不妊症の約半分のケースでは男性が関与しています。

男性不妊症になりやすい人の特徴

陰嚢の特徴

  • 睾丸が小さい
  • 睾丸が柔らかい
  • 睾丸の上に血管のコブがある(精索静脈瘤)
  • 睾丸が陰嚢内の上方あるいは鼠径部にある(停留睾丸)
    など

これらの特徴がある方は、精液の所見が悪化している可能性があります。精索静脈瘤や停留睾丸の方は、睾丸の温度が高くなり、精子を作る能力が低下する原因となります。

陰嚢の特徴

  • 精液量が少ない
  • 精液が透明で白く濁っていない
    など

これらの特徴がある場合、不妊の原因である可能性があります。

生活習慣

生活習慣
  • 喫煙
  • 多量のアルコール摂取
  • サウナや長風呂が好き
  • デスクワーク
  • ストレスをためやすい
  • 肥満
  • タイトな下着の着用
  • ノート型パソコンを膝の上で使用
  • 長時間の自動車・自転車・バイクの運転
    など

これらの生活習慣は、精液所見に悪影響を与えると考えられています。

男性不妊の原因

造精機能障害

造精機能障害とは、精子を作る能力が低下することで、精子の数が減少したり、精子の動きが悪くなったり、奇形の精子が多くなったりする状態です。
精子は精巣で作られ、精巣上帯を通り抜ける間に運動能力を獲得し、受精可能な精子になります。しかし、精巣での精子形成や精巣上帯での成熟過程に異常があると、造精機能障害が生じます。精索静脈瘤が原因になることもありますが、約半数は原因不明とされています。

精路通過障害

精路通過障害とは、精子を作る能力に問題はないが、精子の通り道に異常が起きている状態です。精巣内で精子が作られていても、精液中に精子が出てこない閉塞性無精子症が該当します。

性機能障害

性機能障害は男性不妊の原因の1つであり、勃起や射精に問題がある状態です。勃起不全(ED)や射精障害などがあります。
EDは血管や神経の障害による器質的EDと、精神的ストレスなどによる心因性EDに分けられます。動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病が原因でEDになる方もいますが、タイミング法のように決められたタイミングで性交をする必要がある状況をストレスと感じてEDを発症する方もいます。
射精障害には、射精のプレッシャーが原因で膣内に射精ができなくなる膣内射精障害、射精しても精液が膀胱内に逆流する逆行性射精、精液が出なくなる無精液症などがあります。

男性不妊の検査

精液検査について

妊活中の方はもちろん、「自分の精子は健康なのか」「将来子どもができるのか」を調べる検査です。
男性不妊症の診断で最も重要な検査となります。
当院では精液検査機器「SQA-iO」を導入いたしました。
この機器は、生殖医療研究の先進国であるイスラエルのMedical Electronic Systems社製で、世界60ヵ国以上で導入されている自動精液分析装置です。
WHOの基準に基づいた高精度な測定が可能です。
より迅速で正確な検査により、患者様の負担軽減と早期の治療方針決定が可能となります。

SQA-iOの特徴

  • わずか約1分で迅速測定
  • WHO国際基準に完全準拠
  • 客観的かつ高い再現性を実現
  • 精子運動パターンの詳細解析
  • 継続的な経過観察に最適

精液検査でわかること

  • 精子濃度(精子の数)
  • 運動率(前進する精子の割合)
  • 運動速度(精子の動くスピード)
  • 精子の運動パターン分類
    (速い直進、遅い直進、非直進など)
  • 総精子数
  • 精液量・粘度・pHなどの精液性状

基準値より低い場合は、自然妊娠が難しい可能性があることが分かります。

検査の流れ

  1. 予約
    検査日を予約し、専用容器を受け取り
  2. 採取
    検査当日に射精を行う
  3. 検査
    検査結果は1分で測定可能です。
    ※後日の結果説明も可能です

検査基準値(WHO 2021年版)

項目 基準値 基準値未満の場合
精液量 1.4mL以上 -
総精子数 3900万以上 乏精子症
精子濃度 1600万/mL以上 乏精子症
運動率 42%以上 精子無力症
前進運動率 32%以上 精子無力症
正常形態率 4%以上 奇形精子症
SMI 80以上 -
※精液中に精子が全くない場合は「無精子症」

SQA-iOの特徴

基準値は「1年以内に妊娠した男性の下位5%の数値」です。基準値を下回っても妊娠できないわけではありません。

注意事項

  • 精液検査の結果は生活習慣、ストレス、検査日のコンディション、加齢、喫煙、飲酒、服用薬などの要因により結果にばらつきがあります
  • WHOガイドラインでも「1回の検査では十分な評価ができない」とされています。
    基準値に満たない場合は、医師と相談の上、再検査をお勧めします。
  • マスターベーションで専用容器に全量採取
  • コンドームは絶対に使用禁止(殺精子剤が含まれているため)
  • 2〜7日間(理想は3〜4日間)禁欲していただく必要があります。
    (禁欲の期間が長すぎると死亡精子が増え、運動率が悪くなります)

費用

検査内容 費用(税込み)
SQA-iO精液検査(自費) 5,500円

泌尿器科的検査

精液検査で異常が認められた場合に、泌尿器科専門医による男性不妊症外来への受診をおすすめする場合があります。

血液検査

精子を作る機能や内分泌疾患の有無を評価するために、男性ホルモン(テストステロン)、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、プロラクチンや甲状腺機能を調べます。勃起障害や射精障害がある場合も血液検査が必要になる場合があります。無精子症の場合は、染色体検査や遺伝子検査を行う場合があります。

男性不妊の治療

原因に応じて内科的治療や外科的治療が行われます。原因別の治療方法は、以下の通りです。

精子に異常がある
(造精機能障害)場合

精子に異常が見られる場合は、原因に合わせた治療を行います。サプリメントや漢方、ビタミン剤を使用する場合もありますが、手術や体外受精が必要になるケースもあります。

精路に異常がある
(精路通過障害)場合

炎症が原因で精路が閉塞している場合は、薬物療法が可能な場合があります。薬物療法が難しい場合は、精路再建手術が必要になる場合もあります。

射精に異常がある
(性機能障害)場合

EDの場合は、薬物療法が可能です。性機能障害は原因が分からないことが多く、ストレスやプレッシャーが影響している心因性の場合もあるため、専門医に相談することが重要です。

男性不妊症についてのQ&A

男性不妊症の人はどれくらいいますか?

不妊は、女性だけの問題と考えられがちですが、不妊症の約半数は男性側にも原因があります。
2017年に実施された世界保健機関(WHO)の調査で、不妊症のうち、男性・女性ともに原因がある割合が24%、男性のみに原因がある割合が24%との報告があります。

男性不妊は生まれつきですか?

男性不妊症の原因には、生殖機能の欠損や発達段階での障害など先天的な要因もありますが、ストレスや肥満、精巣の疾患など後天的な要因も考えられます。

男性不妊症の自覚がある人はサウナに入ってはいけませんか?

精子は熱に弱く、サウナの高温にさらされると精液所見や運動率が悪くなる可能性があります。そのため、妊活中はサウナを控えた方が良いでしょう。
ただし、趣味を我慢してストレスをためるのも良くないため、短時間にするなどの工夫が大切です。